今回紹介する本は本屋大賞にもノミネートされた性欲という本です。
タイトルはなかなか刺激的なものでありながらその本当の意味は分からずに手に取りました。
というより今回はオーディオブックで聞きました。
欲望とは均質的で誰もがある程度同じものを持っているのだとこの本を読むまで思っていました。
本書で出てくる登場人物はいわゆる普通の性癖ではなく、かなり特殊な性癖を持った人が出てきます。
自分は異質だと居場所を見失いながら、まっとうに生きる人をうらやましくも自分の欲望は捨てられずにいる。
いままで普通の世界でしか生きてこなかった自分には理解できないように思えますが、朝井リョウの巧みな描写により今までわからなかった。
わかろうとしなかった以上性癖者の気持ちが少しわかるようになりました。
異なる特性を持つ人を変人だったり、異常者だったりと線引きをするのは簡単なことです。
ですが、それでは思考停止でしかなく、当人が抱える本当の苦しみは同情しようとしても全く理解しがたいものや、お角違いになりかねないと感じました。
世の中には自分の異質性に苦しみ、もがきながら生きている人がたくさんいる。
その中で多様性だったり、自分らしさというような言葉を軽々しくは言えなくなったと思います。
自分らしく生きるといわれても、それができない。理解されない人がいる。
その人に責任はない。
多様性の時代と呼ばれるからこそ、余計に息苦しくなってしまう一面もあるのではないかと感じさせられる本でした。